循環型社会の構築に向けた廃棄物分野の国際協力

2011年 05月 18日 23:26

(記:松村 治夫)


私たちが利用している「もの」は、いつかはごみ(廃棄物)になります。今、着ている衣類、履いている靴、使っている携帯電話やパソコン、周りにある家具や家電製品ばかりでなく、住んでいる家や周りの建物、道路やその上を走る車なども、やがては廃棄物になります。

「もの」を作り出す過程でも、鉱山、製錬所、工場、農地など、いろいろな場所で廃棄物が発生します。「もの」の流通や販売の過程でも廃棄物が発生し、発生した廃棄物を処理する過程や、その環境汚染対策の過程でも発生します。
また、「もの」だけではなく、ガスや電力などの見えない「もの」を作る段階でも廃棄物が発生します。言い換えると、大量の廃棄物を生み出すことによって、現在の社会が成り立っているということになります。


これらの廃棄物に対して、わが国では、市民、事業者、行政などの多くの関係者の努力によって、「循環型社会」とよばれる、廃棄物の発生を抑制し、再使用を進め、再利用していくとともに、その上で発生する廃棄物は適切に処理していく社会が現在作られつつあります。
世界に目を向けると、世界の人口の80%以上を占める開発途上国では、人口の増加とともに都市化が進んでいます。これらの地域では、人々の生活や産業活動から発生する廃棄物も急増しており、次のような問題が起きています。


①  住民が出したごみを収集・運搬する体制が整備されていない。
②  運搬したとしても、オープン・ダンピング(野積・投棄)などの不適切な処分が行われて環境汚染が発生している。
③  処分場内で多くのウェイスト・ピッカー(ごみ拾い人)が働いており、効率的な処理の妨げとなっている。
④  至るところで不法投棄が行われて、処分場まで運ばれないごみもある。
⑤  住民の出すごみと産業活動から出る有害廃棄物が一緒に捨てられている。


関係者がこの問題に取り組もうとしても、廃棄物処理に関する知識や経験が乏しいことから、解決のために必要な技術協力をわが国に要請してくるところがあります。
わ が国は、開発途上国も含めて、多くの国々から原材料や食糧を輸入するとともに、これらの原材料から作った製品などを輸出して、現在の豊かな生活を維持して おります。しかし、輸入する原材料や食糧を作り出す過程で多量の廃棄物が現地にて発生し、輸出した製品は、現地でいつかは廃棄物になることを忘れてはなり ません。
わが国の経済活動を支えるこれらの国々の廃棄物問題を解決して、その地域での「循環型社会」を作っていくことは、各国から大きな恩恵を受けているわが国が果たすべき責任でもあります。
私 は、学生時代には、資源開発・処理の分野で鉱山から出る産業廃棄物のリサイクルをテーマとして研究しておりました。その時から「持続可能な社会」は私に とってライフワークのテーマでした。これまで長く関わってきた産業廃棄物の分野も、以前は不法投棄、不適正処理など様々な社会的問題を引き起こしていた分 野でした。この分野は関係者の方々の努力によって大きく改善され、今では静脈産業の担い手として生まれ変わりつつあります。

廃棄物分野の国際協力につい ても、これまで国際協力機構(JICA)等の専門家として、この分野の技術協力に関わるとともに、開発途上国の廃棄物関係者の人材育成活動に協力してきま した。そして、このような協力の積み重ねが、私たちの実現すべき課題である「持続可能な社会」を作り上げる力になるものと思います。この分野に関心のある 方は、一緒に取り組んでみませんか。皆さんの参加をお待ちしています。