(記:岡本 謙一)
今年は、1月下旬から2月いっぱい、毎週のように雪が降った。今日は、3月12日であるが、未明からみぞれのような雪が一日中降っている。
今晩は積もるかもしれない。明日も雪の予報である。今年は特に春が待ち遠しい。
3月6日は、久しぶりに暖かで、朝からウグイスが鳴いていたが、広島地方気象台は、中国地方で「春一番が吹いた」と発表した1)。
この日、低気圧が日本海側を東北東に進み、中国地方では南よりのやや強い風が吹き、多くの都市で高い気温が観測された。広島では、気温が14.9℃となり、南南西の瞬間最大風速が15メートル毎秒の風が観測された。
鳥取でも最高気温が17.3 度まで上昇したとのことである。
春一番は、立春(2月4日ごろ)から春分(3月21日ごろ)までの期間に、その年初めて吹く南よりの風をいう。
春一番が吹いた後は、また冬型の西高東低の気圧配置に戻り、寒さが戻ることが多い。従って、春一番は、春の到来を告げる暖かい風ではない。
鳥取でも平均気温は、3月6日に10.2度になった後、下降し続け、昨日の3月11日は、2.8度と真冬の寒さに戻り雪が降った。
3月7日のお昼ごろ一時日が差したとき、大学構内で気の早いひばりが空高くさえずっていたが、その後はひばりの声は聞かなくなった。
それにしても今年は雪が続いた。
鳥取市内の最深積雪は、2月9日:59 cm、2月18日:61cm、2月19日:71 cmであった。降雪量は、2月2日:27 cm、2月9日:40 cm 、2月17日:27 cm であった2)。
鳥取市内の積雪深、降雪量などは、市内吉方の鳥取地方気象台の露場(ろじょう)での観測データと思われるので、そこからあまり離れていない鳥取環境大学でも似た様な値であったのではないかと想像する。
北海道の富良野市から来ているIさんに富良野の方が雪が多くて大変でしょうと言ったら、鳥取の雪も馬鹿に出来ません、富良野では鳥取のように一晩でどさっと降ることはありません、とのことだった。
気象庁が、2月27日に発表した異常気象分析検討会の分析結果は、テレビや新聞でも報道された3)。
以下、この分析結果を紹介する。
それによると1月後半から2月前半は、中央アジアからヨーロッパにかけて顕著な寒波に見舞われ、多数の死者が出た。また、北日本、東日本および西日本では低温となり、寒気のピーク時には、大雪となり、北日本から西日本の日本海側では、最深積雪が多くの地点で平年を上回った。
この冬の平均的な大気の流れの特徴は、上空8kmから13km あたりを吹く偏西風(寒帯前線ジェット気流と亜熱帯ジェット気流)のうち、寒帯前線ジェット気流が、西シベリア付近で北に蛇行しシベリア高気圧の勢力が非常に強くなったこと、また寒帯前線ジェット気流と亜熱帯ジェット気流が日本付近で南に蛇行し、日本上空に強い寒気が断続的に流入したことである。
亜熱帯ジェット気流の蛇行は、ラニーニャ現象によるインド洋東部からインドネシア付近にかけての活発な積雲対流活動が一因であるとのことである。また、寒帯前線ジェット気流の蛇行については、北大西洋熱帯域の活発な積雲対流活動とラニーニャ現象の影響が合わさった可能性があるとのことである。
ラニーニャ現象は、熱帯太平洋の大気・海洋において観測される平年とは異なった異常現象であるが、その影響は赤道周辺に限られることなく、地球の非常に広い範囲に及ぶ。
ラニーニャ現象は、エルニーニョ現象と対をなす異常現象である。
エルニーニョ時においては、通常時に赤道付近を東から西に吹いている貿易風が弱くなり、熱帯太平洋の西部に溜まっていた暖かい海水が中部から東部太平洋の方へ流出する。また、通常時には貿易風と地球自転のコリオリ力によって熱帯域から中緯度方向に排出される表面海水の抜けた穴を埋める様に南米ペルー沖の深海から海面まで湧き昇ってくる冷たい海水が、エルニーニョ時には観測されない。これらのため、中部から東部熱帯太平洋の海水温が通常時より上昇する。高い海水温からの水蒸気の蒸発によって形成される活発な積雲対流活動の領域も通常時の西部熱帯太平洋域から、エルニーニョ時には中部から東部熱帯太平洋域に移動する。
ラニーニャ時には、これとは逆に通常時に比べて、東向きの貿易風が強くなり、海水温が上昇する領域が通常時よりもさらに西部のインドネシア付近の熱帯太平洋域に移動する。また、中部から東部熱帯太平洋の海水温が通常時よりも下降する。活発な積雲対流活動の領域もインドネシア領域に移動する。このインドネシア付近の活発な積雲対流活動がこの冬の偏西風の蛇行の一因と考えられている。
気象庁は、3月9日に、昨年8月末から続いていたラニーニャ現象が2月に終息したことを発表した。
エルニーニョ・ラニーニャ現象について、熱帯積雲対流による降雨域ならびに表面海水温度の通常時からの変動を観測できる人工衛星に熱帯降雨観測衛星(TRMM)がある。
TRMMは、1997年11月28日の打ち上げ以来、14年以上を経過した現在も降雨観測データを取得し続けている日米共同の地球観測衛星である。TRMM衛星については、リレーエッセイの「宇宙からの降雨観測」の項を参考にされたい。
リレーエッセイの原稿を書いている間も雪は間断なく降り続いた。先程雷も鳴った。あと一週間もすれば春分の日になり、黄道上の太陽も天の赤道を南から北へ横切ることになる。暖かくなって欲しい。3月20日の春分の日は卒業式でもある。