(記:岡本 謙一)
高い山から麓の町や村を眺めると、地面からでは見ることのできなかった広い範囲の景色を一望のうちに眺めることができます。飛行機から撮られた航空 写真では、私達の暮らしている家や学校がおもちゃのように小さく写っています。飛行機は、たかだか上空10 km から航空写真を撮るのですが、人工衛星は、高度500km~1000 km の上空から一度に地球の非常に広い面積、たとえば、150 km × 150 km の関東平野、の写真をとることができます。また、人工衛星は、地球を約100分で一周しますので、一日に地球を約15周することができます。
今、問題になっている地球の温暖化を初め、オゾン層の破壊、熱帯林の破壊などの様々な地球環境問題は、地球的規模の非常に広い範囲にまたが る現象ですから、非常に広い範囲を短い時間で繰り返し観測できる人工衛星からの観測は、地球環境の状況を調べるための有力な手段となります。
私は、人工衛星から、様々な地球環境を観測し、観測データを調べ、地球環境問題を解決するために役立つことを研究しています。
地球環境は、絶妙と言ってもいいほどのバランスのもとに作られています。しかし、近年の爆発的な人口増加、人類による経済活動や生活活動の急速な拡大は、人類を初めとする地上に生存するあらゆる生物の存続そのものをも脅かしかねない様々な地球環境問題を発生させています。
図1は、人口増加曲線を示しています。1950年には、25億人だった世界の人口は、年1.9 % の割合で増加し、1980年には、44億人に達しました。現在、全世界の人口は、約68億人程度といわれていますが、急激に増加しており2050年ごろに は約90億人に達すると予測されています。ただし、それ以降は人口増加は止まり、人口は横ばいの傾向にあるようです。この爆発的な人口増加を支えるために 森林伐採によって耕地面積を拡大したり、石炭、石油などの化石燃料消費が増え、地球の温暖化が進んだり、空気が汚染されたりするなどの問題が発生していま す。今後ますます地球環境問題について、私たちは、関心をむけないといけない状況になりつつあるものと考えます。
いくつかの地球環境問題について、紹介します。
図2は、二酸化炭素濃度の上昇と化石燃料消費との関係を示しています。石炭、石油の化石燃料消費の増大(青い方の図、横軸は年、縦軸は炭素の量で億トンの単位)と大気中の二酸化炭素濃度の増大(赤い方の図、横軸は年、縦軸はppmの単位)を示しています。
大気中の二酸化炭素の増加する割合は、最近になればなるほど大きくなっています。これは、化石燃料の消費の推移とぴったりと一致 しています。大気中に放出された二酸化炭素による温室効果の結果、気温が上昇すると考えられています。自然レベルでは、大気中の二酸化炭素の濃度は約 280 ppmといわれていますが、最近のIPCC第4次報告書(IPCC: 気候変動に関する政府間パネル)によると、2005年には、379 ppm に増加したと報告されています。2008年には385.2 ppmに増加しました。また、最近10年間の上昇率は、1995~2005年の平均で、年当たり1.9 ppm と報告されています。二酸化炭素の濃度が、自然レベルの2倍の約560 ppmになった場合の平均気温の上昇幅は、2~4.5℃と見積もられています。今世紀末の平均気温の上昇の予測結果は、今後の人為的な排出量のシナリオに よって異なりますが、1.1℃~6.4℃の幅があると予測されています。